横浜市立大学医学部眼科学講座 主任教授
横浜市立大学大学院医学研究科視覚器病態学教授(兼務)
水木 信久先生
日本眼科学会評議員
日本眼科学会認定眼科指導医
厚生労働省臨床研修指導医
現在、近視は世界中で増え続け、大きな社会問題となっています。アメリカでは、2000億ドル以上が近視を主とする屈折異常の治療に費やされているといわれており※、今後、近視予防は世界的に重要な課題といえます。
近視になると裸眼視力が低下するため、お子さんの学校生活において、黒板が見えにくい、飛んでくるボールが見えないなどのQOL(生活の質)の低下や、毎日のコンタクトレンズやメガネの装用、その購入に費用がかかるなど、程度の違いはありますが、皆さんの生活に影響を及ぼします。
低下した視力をコンタクトレンズやメガネで矯正させることは可能ですが、一方で、近視は緑内障や網膜剥離、眼底出血といった失明に至る他の目の病気につながるリスクが高くなります。また、病的近視では、このような目の病気にかかるリスクがさらに高まることがわかっています。そのため、近視の早期発見と進行予防が非常に重要になります。
目によい生活習慣を身につけることで、近視を未然に防ぐことも、発症した近視の進行を抑えることも十分可能です。
私たちが行った研究により、近視の進行が最も早いのは成長期だということが明らかになっています。そのため、一生のうちの、この時期に遺伝子検査などを活用して、早期に生活習慣の改善に取り組むことは、その方のその後50年、60年、70年、それ以上という生涯にわたって良好な視機能を維持するため大変有用と考えます。
もちろん、小さなお子さんのみならず、成人された方にとっても、自分の近視進行のリスクや合併症の程度を知っておき、一生にわたり視機能が保たれた状態を維持することは、その方の人生を豊かに彩ることにつながっていくでしょう。
いつまでも自分の目で見て、活き活きとした生活を送るためにも、近視の早期発見および進行予防に心掛けましょう。
※眼科Vol.59.No9.2017より